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● 文頭から読む
「物語の英語」(2)
----------------------------------------------------------- Then
the snow came, and after the snow came the frost. The street looked as if
they were made of silver, they were so bright and glistening; long icicles
like crystal daggers hung down from the eaves of the houses, everybody went
about in furs, and the little boys wore scarlet caps and skated on the
ice. (Oscar Wilde: "The Happy
Prince") ------------------------------------------------------------
(説明) Then
the snow came, /and after the snow /came the frost. 「それから雪の到来となり/
雪のあとに/やって来たのは凍りつく寒 さでした」
(倒置構文と言われる語順になっていることに注目して見る)
The
street looked as if they were made of silver, /they were so bright and
glistening; /long icicles like crystal daggers/ hung down /from the eaves of
the houses, / everybody went about/in furs, /and /the little boys wore
scarlet caps /and skated on the ice. 「街はまるで銀で造られているかのように見えました/
街はまこと にきらきらして輝いていたのです/ 水晶製の短刀みたいな長々とした 氷柱(つらら)が/ ぶらさがっていたのです (どこに?
と直後発想しな がら読み進んでゆくようにする) /家々の軒先からです/みんな行き来 していました/ 毛皮を着て/ 更に言えば/
幼い男の子たちは深紅色の 帽子をかぶって氷の上をすべっていました(というほどに寒い冷たい 時期だったのです)」
---------------------------------------------------------- The
poor little Swallow grew colder and colder, but he would not leave the
Prince, he loved him too well. He picked up crumbs outside the baker's door
when the baker was not looking, and tried to keep himself warm by flapping
his wings. But at last he knew that he was going to die. He had just
strength to fly up the Prince's shoulder once more. "Good-bye, dear Prince!"
he murmured, "Will you let me kiss your hand?" (Oscar Wilde: The Happy
Prince) ----------------------------------------------------------
(説明) The
poor little Swallow @grew colder and colder, /but he Awould not leave the
Prince, /Bhe loved him /Ctoo well. 「かわいそうに その小つばめは @ますますこごえそうになってき ました/
でも王子の元から A飛び去ろうとはしませんでした, /B王 子が好きだったのです/ Cそれもいいつくせないくらいに
です」
(英文のなかの代名詞は、日本文ではできるだけ名詞に転換して意味を おさえてゆく。それが英文マインドを適確にとらえるということにつ ながる。英文中の形容詞をとらえてゆくには、日本語の発想では副詞 の感覚でとらえなおしてゆくとよい場合も多々ある。ここの文頭の poor
は「かわいそうなつばめ」のようにとらえないで、「かわいそうな ことに」というような感じでとらえてゆく、つまり、副詞的な感覚でと らえてゆく)
He
picked up crumbs /outside the baker's door /when the baker was not looking,
/and /tried to keep himself warm /by flapping
his wings. 「小つばめはパン屑をついばみました/ パン焼き店戸口の店先で/ そ このパン職人が見ていないすきに/ さらに/
(小つばめは) 自分の体を なんとかして冷えこませないようにしようとしていました/
(その手段 は)自分の羽をパタパタさせることだったのです」 But /at last/ he knew /that he was going to
die. 「しかしです/ ついに/ 悟りました/
もうすぐ死ぬのだな、と」
(butは「逆接」を示す標識である。文の流れが反転することを示す信 号である。作者は今まで述べてきた内容とは対照的な内容を述べたり 本音本心を披露し始めたりする)
He
had just strength /to fly up the Prince's shoulder once
more. 「つばめにはまあなんとか力はありました/ 王子の肩の上に舞い上が る力ぐらいは/
もう一度だけ舞い上がる力ぐらいは」
"Good-bye, dear Prince!" he murmured, / "Will you let
me kiss your hand?"
「『さようならいとしい王子様、お手にキスさせていただいてよろし いでしょうか』と小つばめはささやきました。
(英語と日本語との引用符の使い方に上記のような差があることに注目 する)
(全訳)
「かわいそうにその小つばめはますます凍えそうになってきました/ でも王子の元から飛び去ろうとはしませんでした/王子が大好きだっ たのです/それも言い尽くせないくらいに」 「小つばめはパン屑をついばみました/パン焼き店の店先で/ここのパ ン職人が見ていないすきに/さらに/
(つばめは)
自分の体をなんとかし て冷え込ませないようにしようとしていました/自分の羽をパタパタ させながら」 「しかしです/ついに/悟りました/もうすぐ死ぬのだな、と」 「つばめにはなんとか力はありました/王子の肩の上に舞い上がるぐら いの力なら/もう一度だけ舞い上がるだけくらいなら」 「〈さようなら、いとしい王子様、お手にキスさせていただいてよろ しいでしょうか〉と小つばめはささやきかけました」
Sir
Isaac Newton was a great thinker. No other man of his time knew so much about
the laws of nature; no other man understood the reasons of things so well as
he. He learned by looking closely at things and by hard study. He always
thinking, thinking. Although he was one of the wisest men that ever lived,
yet he felt that he knew but very little. The more he learned, the better
he saw how much there was still to be learned. (Sir Isaac Newton and
the
Apple) --------------------------------------------------------------------
(説明) Sir
Isaac Newton was a great thinker. 「アイザック・ニュ−トン郷は偉大な思索家でした」
No other
man of his time knew so much /about @the laws of nature; /no other man
understood /Athe reasons of things /so well as he. 「ニュートンの(生存時の)頃
ニュートン以外の人はだれもあまり知 らなかったのです/@自然界の法則について/ (ニュートン以外の)ほか の人は 分からなかったのでした/
A物事の道理が です/ ニュートン (がわかっていた)ほどに十分には
(分からなかったの)です」
(@を言い換えたのがAである、と考えればよい。バリエーション表現 を見抜けるようになると、英文マインドが透明に見えて来る。英文マ インドの流れのなかでは、同一の言葉の繰返しは嫌われる。日本語の なかでは同じ言葉が幾度繰り返されても苦にならない。英語と日本語 はこの観点からみると対照的である)
He
learned / {@by looking closely at things /and /Aby
hard study}. 「彼は学んだのです/その手段は{@とA}でした」
(and
が来たら何と何とを連結しているのかを見抜いてゆく。ここでは @とAである。「事物の注視観察によって」と「熱心な研究によって」と が連結されている)
He
was always thinking, thinking. 「彼はいつも思索に思索を重ねていました」
@Although he was
one of the wisest men that ever lived, / yet he felt /that he knew but very
little.
(@は少し長い「文頭の副詞節」である。「譲歩」を表す信号がalthough である。「ニュートンは、偉大な人ではあったのではあるが、それでも ---であったのだ」ということを言い始める「譲歩信号」である。文頭に登
場する副詞、副詞句、副詞節は、すべて広い意味では、「副詞」の役目 をしている。文頭に登場する広義の副詞を一括して「文頭副詞」として とらえてゆくとよい。「文頭副詞」がどんな信号を出しているのかをと らえてゆくと文の流れが鮮明になる。この信号をウォッチしていると 「さあ、ここから作者は何を言い始めるのかということを予測すること ができる。これができるようになると、文頭からの読みはますます滑 らかになってゆく」
「ニュートンは最賢人の内のひとりではありましたが/それまでに仮 にも世を過ごした最賢人の内でのひとりではありましたが/それでも 自分では気づいていたのでした/分っていることなんてほんのちょっ ぴりなんだと」
The
more he @learned, /the better he Asaw /how much there was Bstill to be
Clearned. 「ニュートンは自分が(自然界を)@知れば知るほど/ますますはっき りとAわかってきたのです(何が見えてきたのだろうか、と直後発想し ながら読み進んでみるとよい)
/Bこれから先Cつきとめられねばなら ないどんなにか沢山のことが存在しているのか(ということがです)」 (ここでのlearn
の意味は「(自然を)学ぶ」の意味であるが、もう少し厳 密に言えば「自然界を知り突き止めてゆく」という意味。Aのsee は会 話でよく使われる"I
see."=「わかりました」
のseeであると考えればよ い。このseeの意味は、見えているものが自己の内奥に入り込んでくる ことによって〈分かる〉という境地に達する、と考えることによって この言葉の意味をよく理解できる。これに対してlook
(at)の方は視線 が外界に向かうので「(一点を)注視する」という感覚になる。
(全訳) 「アイザック・ニュートン郷は偉大な思索家でした」 「ニュートンの(生存時の)頃、ニュートン以外の人はだれもあまり知ら なかったのです/自然界の法則について/
また
(ニュートン以外の)ほ かの人は分からなかったのでした/物事の道理が/ニュートン(がわかっ ていた)ほどに十分には(分からなかったの)です」 「ニュートンは学んだのです/その手段は〈事物の注視・観察〉と〈熱 心な研究〉でした」 「彼はいつも思索に思索を重ねていました」 「ニュートンは最賢人の内のひとりではありましたが/
それまでに仮に も世を過ごした最賢人の内でのひとりではありましたが/それでも自 分では気づいていたのでした/ 分っていることなんて
ほんのちょっ ぴりなんだと(いうことに)」 「ニュートンは自分が(自然界を)知れば知るほど/
ますますはっきりと わかってきたのです/これから先、突き止められねばならないことがど んなにか沢山、存在しているか(ということが)」
-------------------------------------------------------------------- There
were once six blind men who stood by the roadside every day, and begged from
the people who passed. They had often heard of elephants, but they had never
seen one; for, being blind, how could they? It so happened one morning that
an elephant was driven down the road where they stood. When they were
told that the great beast was before them, they asked the driver to let
him stop so that they might see him. Of course they could not see him with
their eyes; but they thought that by touching him they could learn just what
kind of animal he was. (The
Blind Men and
the Elephant) --------------------------------------------------------------------
(説明) There
were once six blind men/ who @{stood by the roadside every day}, /and
A{begged /from the people who
passed}. 「昔のことですが目の不自由な人が6人いました/道端で毎日立って いた目の不自由な人でした/そして物乞いをしていた目の不自由な人 でした/通りがかった人々から物乞いをしていたのです」
(andが来ているから何と何とが連結されているのかを確認しておく。 ここでは@{
}とA{
}である)
(関係詞が登場する文の文頭読みはなかなかに難しい。「名詞もしくは 代名詞の直後に接触する後置の形容詞(広義)」という流れは日本語には 存在しない流れである。日本語では形容詞(広義)は名詞や代名詞の上 流側に来る。英語のリズムの中では形容詞句も形容詞節も名詞や代名 詞の下流側に来る。「英文では名詞や代名詞の下流側に形容詞(広義)が 来る」のだ、ということをはっきりと意識してゆく。英文におけるこの リズム感を体得してゆくことは英文の文頭読みにとってきわめて大切 なことである)
They
had often heard of elephants, /but they had never seen @one; /for, A{being
blind}, /how could they? 「この目の不自由な人たちはよく象について耳にしていました/
しか し@象を見たことはありませんでした/というのはA{目の不自由な人 でしたから} 見ようにも見られなかったわけです」
It so
happened one morning /that an elephant was driven /down the road where they
stood. 「たまたまある朝こういうことが起きたのです/象が一頭御される [追いたてられる]ということが/この目の不自由な人たちが立っていた 道路に沿ってです」
When
they were told that @the great beast was before them, /they asked the driver
to let @him stop /Aso that they might
see @him. 「あなたたちの前に例の巨大な動物がいますよ、と目の不自由な人た ちが言って聞かされたとき/目の不自由な人たちは御者にその象を立 ち止まらせるようにと頼みました/(その目的は)目の不自由な人たちが その象(の正体を)理解することができる(かもしれない)ためにです」
(@はelephantのバリエーション表現である、ということを押さえてゆ く。Aのso
thatは目的を述べ始める「信号」であると考えて意味を押さ えてゆく。そうすれば返り読みでなくて、文頭から順送りに素直に意 味をとらえることができる)
Of
course /they @could not see him with their eyes; /but they thought /that by
touching him /they could learn /Ajust what kind of animal he
was. 「もちろん/目の不自由な人たちは象を自分の肉眼で@見る能力はあ りませんでした/しかし目の不自由な人たちは考えたのです/象にさわ れば/わかるのではないだろうかと/象がどんな種類の動物であるAか くらいは」
(全訳) 「昔のことですが目の不自由な6人がいました/道端で毎日、立ちつく していました/物乞いをしていたのです/通りがかった人々からですが」 「この6人はよく象のことについて耳にしていました/
しかし象を見た ことはありませんでした/というのは、目が不自由でしたから見ように も見られなかったわけです」 「たまたまある朝こういうことが起きました/象が一頭
御されてやっ てくるということが/6人が立っている道路に沿ってです」 「みなさんの前にいま巨大な動物がいますよ、と言って聞かされたとき /6人は御者にその象を立ち止まらせてくれとせがみました/
(その目 的は)この目の不自由な人たちがその象(の正体を)理解することができ る(かもしれない)ためにです」 「もちろん/この目の不自由な人たちは象を自分の肉眼で見る能力はあ りませんでした/しかし考えたのです/象にさわれば/わかるのではない だろうかと/象がどんな種類の動物であるかくらいかは」
-------------------------------------------------------------------- A
young man whose name was Pythias had done something which the tyrant
Dionysius did not like. For this offense he was dragged to prison, and a day
was set when he should be put to death. His home was far away, and he wanted
very much to see his father and mother and friends before he died. (Damon
and Pythias) --------------------------------------------------------------------
(説明) A
young man whose name was Pythias/ had done something which the tyrant
Dionysius did not like.
(学校文法で五つの文型を習う。この五つの文型は、S+V, S+V+C, S+V+O,
S+V+O+O, S+V+O+C
である。ここに、Sは主語、Vは動詞、C は補語、Oは目的語である。これを見ている限りでは、英文ではどの 文型においても、主語が来てすぐに動詞が後続するように感じられる。 しかし、現実の英文に直面してゆくと、SとVとがずいぶん離れている 場合の多いことに気がついてくる。Sの後方にはこのSのことを説明す る後置の形容詞(広義)が接触してくることを認識するようになる。こ れが普通の英語のリズムである。S
が来て次には後置の形容詞(広義) が来てSの説明をする、それからやっとそのS がどうなったとか、ど うなっているということを述べるV
(述部ないしは述語動詞)が来る。 この流れが英文の典型的なリズムである。このリズムがとらえられる ようになると、英文の文頭読みはおおいにさえてくるようになる)
「ある若者がいまして(S)/その名前がピシャスであった若者のことで すが(後置の形容詞)/あることをやってしまいました(V)/暴君のディオ ニシウスが気にいらなかったあることを
です」
(which 以下もsomethingに直後接触している。ここも
somethingの内 容を説明している後置の形容詞である)
For this offense /he was dragged to
prison, /and a day was set/when he should be put to
death. 「王のご機嫌を損じたために/ピシャスは牢にひきずって連れて行か れました/そして日が設定されました/ピシャスが死刑に処せられる日 が
です」
His home was far away, /and he wanted very much to see his
father and mother and friends /before he
died. 「ピシャスの故郷はずっと遠方にありました/ピシャスはぜひとも父 母友人に会いたかったのです/死の前に」
(全訳) 「ある若者がいまして/その名前がピシャスであった若者のことです が/あることをやってしまいました/暴君のディオニシウスの気にいら なかったあることを
です」 「王のご機嫌を損じましたので/ピシャスは牢にひきずって連れて行か れました/そして日が設定されました/ピシャスが死刑に処せられる日 が
です」 「ピシャスの故郷はずっと遠方にありました/ピシャスはぜひとも父母 友人に会いたかったのです/死の前に」
-------------------------------------------------------------------- The
north wind was rushing along and blowing clouds as he passed. "Who is so
strong as I?" he cried. "I am even stronger than the sun." "Can you show
that you are stronger?" asked the sun. "A traveler is coming over the hill,"
said the wind. "Let us see which of us can first make him take off his
long cloak. The one who succeeds will prove himself the stronger." The
north wind began first. He blew a gale, tore up trees, and raised clouds of
dust. But the traveler only wrapped his cloak more closely about him, and
kept on his way. Then the sun began to shine. He drove away the clouds
and warmed the air. Higher and higher he climbed in the blue sky, shining
in all his glory. "What a fine day we are having after the blow!" said the
traveler as he threw off his cloak.
(The Wind and the
Sun) --------------------------------------------------------------------
(説明) The
north wind was rushing along /and blowing the clouds /as
he passed. 「北風が烈しく突き進んでいました/そして雲を吹き飛ばしていまし た/その北風が通り過ぎて行く時に
です」
"Who is so strong as I?" he
cried. 「だれが俺ほど強いだろうか、と北風は大声で言いました」
"I am even stronger than the
sun." 「俺は太陽よりもぜったい強いぞ」
"Can you show/ that you are stronger?" asked
the sun. 「〈君は証明出来るかい/君の方が強いってことを〉と太陽が尋ねま した」
"A traveler is coming
over the hill," said the
wind. 〈旅人がひとり丘をこえてこちらへやって来るね〉と北風が言いまし た」
"Let us see /which of us
can first make him/ take off his long cloak. 「ひとつ見てみましょう/
我々の内のどちらが最初にあの旅人にさ せることができるのかを/あの旅人が自分の長いマントを脱ぐことを させられるかをね」
The
one who succeeds will prove himself the
stronger." 「首尾よく成功した方が(二人の中では)強い方だということを証明 することになる」
The north wind
began first. 「北風が先に始めました」
He blew a gale, tore up trees, and raised
clouds of dust. 「北風は疾風を吹きつけたのです、樹木を根こそぎにしました、たく さんの埃を巻き上げました」
But
the traveler only wrapped his cloak /more closely about him, and kept on
his
way. 「しかしその旅人はただただ自分のマントにくるまりつづけたので す/今まで以上にしっかりと/そうやって歩み続けたのです」
Then
the sun began to shine. 「今度は太陽が照りつけ始めました」
He drove away the clouds and
warmed the air. 「太陽は雲を追い払い大気を暖めました」
Higher and higher/ he climbed in
the blue sky, /shining in all his glory. 「いよいよ高く、高く/太陽は大空に昇って行きました/
輝きのかぎり をつくして照りわたったのです」
"What a fine day we are having /after the
blow!" said the traveler /as he threw off his cloak.
「〈なんという上天気になったもんだ/
あの疾風の後でさ!〉と旅人は 言いました/マントを脱ぎながらです」
(全訳) 「北風が烈しく突き進んでいました/そして雲を吹き飛ばしていまし た/その北風が通り過ぎて行く時に
です」 「だれが俺ほど強いだろうか、と北風は大声で言いました」 「俺は太陽よりもぜったい強いぞ」 「〈君は証明出来るかい/君の方が強いってことをね〉と太陽が尋ねま した」 〈旅人がひとり丘をこえてこちらへやって来るね〉と北風が言いまし た」 「ひとつ調べてみましょう/我々の内のどちらが最初にあの旅人にさせ ることができるのかを/あの旅人が自分の長いマントを脱ぐことをさ せられるかをね」 「首尾よく成功した方が(二人の中では)強者であるということを証明 することになる」 「北風が先に始めました」 「北風は疾風を吹きつけたのです、樹木を根こそぎにしました、たくさ んの埃を巻き上げました」 「しかしその旅人はただただ自分のマントにくるまるだけでした/今ま で以上にしっかりと
です/そうやって歩み続けたのです」 「今度は太陽が照りつけ始めました」 「太陽は雲を追い払い大気を暖めました」 「ますます高く、高く/太陽は大空に昇って行きました/輝きのかぎりを つくして照りわたったのです」おい 「〈まったくなんという上天気になったものだ/あんなにすごい疾風だっ
たのに!〉と旅人は言いました/マントを脱ぎながらです」
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