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@Christy

NO.356

平成18年8月15日
August 15,2006

● 真民さん『鳥は飛ばねばならぬ』から   (英訳:坂井孝彦,英文校閲:Frances Ford)

2.2鳥は飛ばねばならぬ

鳥は飛ばねばならぬ
人は生きねばならぬ
怒涛の海を
飛びゆく鳥のように
混沌の世を生きねばならぬ
鳥は本能的に
暗黒を突破すれば
光明の島に着くことを知っている
そのように人も
一寸先は闇ではなく
光であることを知らねばならぬ
新しい年を迎えた日の朝
わたしに与えられた命題
鳥は飛ばねばならぬ
人は生きねばならぬ

Birds Must Fly

Birds must fly;
we must live.
Just like birds flying over the roaring rough seas,
 we must live through the world
 of chaos and confusion.
Birds instinctively [by instinct] know
 that they will reach the island of hope
 after the breakthrough of darkness.
Just as they do, we must know
 that the future won't be a dark sealed book
 but a glorious hope [a glory].
On the morning of the first day in every New Year,
 I receive the following proposition:
 Birds must fly;
 humans must live.

2.3かなしみ

かなしみは
わたしを強くする根
かなしみは
わたしを支えている幹
かなしみは
わたしを美しくする花
かなしみは
いつも枯らしてはならない
かなしみは
いつも湛えていなくてはならない
かなしみは
いつも噛みしめていなくてはならない

A Feeling of Sorrow

A feeling of sorrow means:
 the roots to let me become tough,
 a trunk to sustain me,
 and a flower to let me become beautiful.
You must not let a feeling of sorrow wither at any time.
You must always be brimful of a feeling of sorrow.
You must always chew a feeling of sorrow.

2.4本気

本気になると
世界が変わってくる
自分が変わってくる

変わってこなかったら
まだ本気になってない証拠だ

本気な恋
本気な仕事

ああ
人間一度
こいつを
つかまんことには

Put Your Heart into What You Do

Put your heart into what you do,
 and the world around you begins to change,
 and so do you too.

"No changing" is proof
 that you are still half-hearted.

Love true
 and work in earnest.

Oh, as a human being, at least once in life,
 you must catch hold of it.


● 佛説摩詞般若波羅密多心経(ぶっせつまかはんにゃはらみったしんぎょう)現代語訳と英訳

「般若心経」はあまりにも有名なお経ですが,その意味をきちんととらえる,
あるいは,分りやすく伝えることは,なかなかに難しいことのようです。
英訳文の一部を以下に紹介させていただきます。

(出所:The Core Sutra of Perfect Wisdom.
英語訳般若心経. 監修:松原泰道 金岡秀友.
翻訳:リービ英雄.
発行者:難波光定.
発行所:浄土宗・清林寺―東京都文京区向丘)

和文現代語訳のほうは、寺田一清先生(1997)の
『佛説摩訶般若波羅蜜多心經新訳』(不尽叢書刊行会)から引用させていただきました。

(quote)
Kanjizai Bosatsu, / who freely perceives all things, /
「すべてを透観せられた菩薩さまは」
practicing the profound perfect wisdom, /
「深い智慧と真理を実践せられ」
cast the light of perception /
on the five elements that compose all worlds /
and saw that they are all emptiness, /
「この五体そのものが真理そのものであると自証され」
and thus overcame / all afflictions and disasters, /
「一切の苦悩を救済せられました」

and spoke: /
O Sharishi, /「舎利子よ」

form is none other than emptiness, /
「すべての現象は宇宙生命の現われに他なりません」
(=「色不異空」)
emptiness is none other than form. /
「宇宙生命はもろもろの現象となって具現されております」
(=「空不異色」)

Form ― it is, in fact, emptiness. /
「個別現象即宇宙生命です」(=「色即是空」)
Emptiness ― it is, in fact, form. /
「宇宙生命即個別現象です」(=「空即是色」)

To sense, / to conceive, / to will, / to recognize ― /
「すべての感覚・想念・行動・意識も」
they too are all like this. / 「また同じことです」
Thus, Sharishi, 「舎利子よ」
all these / are, in character, emptiness.
「すべての存在は宇宙生命の力と働きなのです」
They are not mere things / that appear or disappear. /
「したがって宇宙生命には生滅はございません 
実存として永遠不滅です」

Nor are they things impure or pure. /
「また汚れもないだけにキレイにすることもなく
質的にも永遠不易です」
Nor do they merely increase or decrease. /
「また増減はなく量的にも永遠に不変です」

--------------- (中略) ----------------

There is no enlightenment, /
and there is no attaining of enlightenment,
/「智慧があり得悟があるのも」
because there is no attaining of anything. /
「そしてすべての能力・資質・財産の根本を思えば
絶大な宇宙生命力なくしてはあり得ないのです 
言うなればすべては神佛のかりものなのです」

Because one who quests for enlightenment /
relies on the Perfect Wisdom, /
「これが真の悟りというものです この深い智慧と真理によって」
his heart is free from obstacles. / 「心にとらわれがなくなり」
Because he is free from obstacles, / he has no fear.
「心にとらわれがないために 怖れおののきがなくなり」
Released from all inverted thought / and dreamlike delusion, /
「一切の迷いや思いちがいから遠のき脱却できて」
he enters into ultimate Nirvana. / 「ついに大安心の境涯にいたるのです」

All Buddhas, / all awakened beings /
of past, present and future,/
「三世にわたる諸佛さまも」
relying on the Perfect Wisdom, /
「この智慧と真理によって」
attain the supremely correct, / universal wisdom. /
「この上ない悟りを得られ 
深い智慧と真理を体得せられたのです」

------------ 後略 --------------

(unquote)

般若心経のなかでとりわけ有名な次の箇所についてその現代語訳と英訳を
抽出してみます。

リービ英雄先生(作家,法政大学教授)による英訳:

色不異空(しきふいくう)
空不異色(くうふいしき)
色即是空(しきそくぜくう)
空即是色(くうそくぜしき)

Form is none other emptiness,
emptiness is none other than form.
Form ― it is, in fact, emptiness.
Emptiness ― it is, in fact, form.

これに対して,故 市川真人先生(名古屋大学名誉教授)から
かつて次のようなコメントをいただきました:
 
「色」は、Sein[ドイツ語]がぴったりで、
英語ならばBeing。
Formでは必要以上にBeing[存在]が限定されています。

 2004年10月に出版された 柳澤桂子.『生きて死ぬ智慧』東京:小学館.
における般若心経の現代日本語への訳文やその解説には多くのひとびと
が共感されたようです。この本に収録された英訳文のほうは,しかしな
がら,上記の「The Core Sutra of Perfect Wisdom. 英語訳般若心経.」に

あるものと同一のものでした。

この英文は,なかなか難解のような気がします。
英語母語者をはじめとする英語圏の人々や
英語を勉強中あるいはかなりできるようになった
英語圏以外の英語話者にとっても,
きっとこの英訳文はまだまだかなり難解に
思われるのではないでしょうか。
直訳ではなくて意味をおさえたやさしい意訳が
できてくるといいなあ、とはおもいますが、
あまりにもいろいろな解釈や意味の
捉え方がありますので、
なかなかの難事なんでしょうね。

(柳澤桂子 現代語による解説訳):
私たちは広大な宇宙の中に存在します。
宇宙では形という固定したものは
ありません。実体がないのです。
宇宙は粒子に満ちています。
粒子は自由に動きまわって形を変えて
おたがいの関係の安定したところで静止します。

形のあるもの,いいかえれば物質的存在を
私たちは現象として
とらえているのですが,
現象というものは,
時々刻々変化するものであって,
変化しないというものはありません。

実体がないからこそ形をつくれるのです。
実体がなくて変化するからこそ
物質であることができるのです。

あなたも宇宙の中で粒子でできています。
宇宙の中でほかの粒子と一つづきです。
ですから宇宙も「空」です。
あなたという実体はないのです。
あなたと宇宙は一つです。

(寺田一清先生の現代語訳)
すべての現象は宇宙生命の現われにすぎません。
宇宙生命はもろもろの現象となって具現されております。
個別現象は即宇宙生命です。
宇宙生命即個別現象です

「茂木和行(1988)『ゼロの記号論』毎日新聞社」の
p90に次のような説明があります:
 「空」の概念のなかには、
自己を「無にする」という何もない状態と、
万物を「無限に」含む状態が共存する。
つまり「空」とは「無」と「無限」という
相入れないはずの対立概念の共存なのである。
 しかし現実には「無」も「無限」もともにつかみえない
何かある深遠な存在であり、
「空」をそれに擬したとしても、
言葉でつかみとろうとすると掌からするりと逃げてゆく。
 スブーティ(釈迦の高弟)が、
「無量」がすなわち「空」なのか、
と問うたのにたいし、
釈迦は「一切のことがらは空である、
とわたしは説いたではないか?」と語リ、
さらに進んで次のように答えるのである。
 スブーティよ。〈無量〉〈無数〉〈無相〉〈無願〉〈形成しないこと〉
〈起こらないこと〉〈生じないこと〉〈無〉〈欲望を離れること〉
〈止滅〉〈ニルヴァーナ(涅槃)〉として
如来が説かれ話されたこれらのことがらは、
唯の言説にすぎない。

このことは、修業完成者・敬わるべき聖者
・完全なさとりを開いたひとによって、
説法を顕揚するための説明として説かれたのである。

 宇宙物理学者の佐治晴夫先生は『ゆらぎの不思議(PHP文庫)』の中で
次のように言及されています:
 「色」とはサンスクリットでルーパ(rupa)のこと、rupとは "
かたちづくる" という意味で、
aは「壊す、変化するもの」という意味をもつことから考えれば、
「色」とは私たちの五感で感じたり触れたリできるもの、
つまり生滅をともなうふつうの物質的現象のことでしょう。
 一方「空」とはシューニャ(sunya)、これは、たんに「何もない、
実体がない」というような意味ではなく、
何とも説明のしようのない概念ですが、
一言でいえば、すべてのものを生みだし、
すべてのものがかえっていくであろうところを
意味しています。漠とした根源的な状態としか
いいようがありません。

ということは、すべてのものごとはかかわりあっていて、
移ろいゆき、かたときもとどまることがないということでしょう。

 
 
 佐治先生のご説明には納得できる内容が多々あるように感じます。
とくに「すべてのものごとはかかわりあっていて、
移ろいゆき、かたときもとどまることがない」という文言は,
時間軸と空間軸を考慮にいれたご説明になっているように
感じられます。

宇宙の宇は
天地四方つまり空間をあらわし,
宇宙の宙は
古往今来つまり時間をあらわすようです。
いいかえれば,宇宙とは 「時空の世界」です。
ビッグバンは時間と空間を生み出しました。
時を経て人が宇宙に登場しました。
人体は25種類の元素でできているようですが,
時が来れば人体というこの25種類の元素でできている複合体も,
個別の元素に分解されたり,
他の元素と混合したり化合したりして,
地中地表にもどって凝縮され固化したり液化したり,
あるいは空間に分散されて気化したり
することになります。

万物は空間のなかにあって時間ととともに,
まわりの諸相とかかわりあい,
その相や姿を絶えず変えて流転しつづけてゆきます。

しかも「空」に姿をかえるもの,
「色」に姿を変えるものの
その総量はどのような時にあっても
一定であって増減しない―変わらない―わけです。
まあ,こんなことをお釈迦様は悟られたのかもしれません。

 般若心経の最終の箇所について:
 『羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆詞』
(ぎゃーてー ぎゃーてー はーらーぎゃーてー はらそうぎゃーてー 
ぼーじーそわかー)
 
 般若心経の最後の呪文部分は、唐の三蔵玄奘によるサンスクリット語か
らの漢訳においてもサンスクリット語の音写のみとなっており、
Levy Hideo先生も最終的には英訳文においても
音写のみとされています。

下の括弧内の英文はご翻訳作業の過程での
Levy Hideo先生の英訳文です:

GYATEI GYATEI HARAGYATEI /
HARASOGYATEI BOJISOWAKA /
HANNYA SHINGYO
(Gone, gone across, / you who have gone across, across to the
other shore, you have reached the other shore. Blessed be wisdom!)
 「(彼岸すなわち大安心の境涯に)渡ろう・渡ろう 
(あなたも、わたしも、みんな)きっと渡れる、
渡れる 渡れた、渡れた、
ああなんとありがたいことよ 
これが般若心經です」

“GYATEI GYATEI HARAGYATEI HARASOGYATEI BOJISOWAKA”

(この「行け行け,彼岸の世界へ行け」の箇所を,
般若心経全体のリズムに合わせるには、
少し,工夫が必要です。
波羅僧羯諦 菩提薩婆詞の
ところの、波羅と薩婆は
「ハーラー」「ソーワー」のような二拍の長音にしないで、
それぞれ,「ハラ」「ソワ」のような一拍の発声にすれば
よいようです。)

 
 真民先生は『羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆詞』
について空外先生の訳し直しを引かれて
次のような主旨の説明をされています:

 「心にひっかかるものがなく、そして前進せよ」
 「こころに引っかかるものがなくなって、空をゆく雲のように、ある
いは流れる水のように生きてゆける。そういう生き方をせよ」
 (出所:『致知―1998年2月号』)

「過ぎ去った過去のことを嘆かずに前向きに生きよ」
とも言われています。

 この呪文部分についての「柳澤桂子 現代語による解説訳」は,つぎの
ようなサラリとした内容になっています:

行くものよ 行くものよ
彼岸に行くものよ
さとりよ 幸あれ

 「あの世に旅たつ」とは,
つぎのようなことを意味しているのでしょうか。

個々の人間も「万物一切を包含するの森羅万象」の一部であって
その一象をしめているのではあるが,
時来たれば,地に散り,
あるいは,空に散り,
姿相を変えて
固化・液化・気化して流転空転してゆくのだよ,
それは,
こと人間だけにあてはまることではなくて,
「万物一切・森羅万象」にあてはまる
ことなんだよ,
しかも,宇宙のなかにあっては,
時間的にも空間的にも固化・液化・気化の
諸姿相の総量は不変なんだよと,増減はないのだよ,
と悟ってゆけばいいのだよ,

とお釈迦様は言われたのでしょうか。
ひょっとしたら,
これはアインシュタインの考え方に通じているのでしょうか。

 八王子の常楽寺の吉田真譽住職さんは,
般若心経をHeart Sutraであるととらえられて,
これを子どもたちにもわかるようにとわかりやすい
現代日本語にされました。その日本語を英語にして下さい,
とのご依頼をいただきました。
住職さんの現代日本語訳とそれに対応する
英語の拙訳を下記させていただきます。

般若心経 The Heart Sutra−The Wisdom Sutras

  現代日本語訳:吉田真譽 吉田洋眞
   (Modern Japanese translation:
Shinyo Yoshida & Yoshin Yoshida) 
    
観音様のような やさしい心 大きな心
私が目覚めれば世界は光り歌い出す
私の世界と仏の世界 仏の世界と私の世界
When awakened, kind in heart and broad in mind
like the Buddhist deity of mercy,
to what you should be,
you will see the world around you
sparkling with joy and breaking into tunes,
and you will see the world inside yourself
to be favored by Buddha’s providence.

すべては変化しつづける
人それぞれの色々な見方
その見方に人それぞれ縛られている
ああでもなければこうでもない
きれい きたない 多い 少ない 好き 嫌い
みんな心のうちしだい
You will see everything in the world is changing.
You will realize
that everyone is bound by his or her different viewpoint.
This leads them into going around in circles and getting nowhere.
You may regard something as clean or dirty;
abundant or scanty in volume,
favorable or unfavorable to you.
All of these decisions you may form come from
what you think of what you see,
but the phenomena per se you see,
all of them, are actually in neutrality.

つまらない心にはつまらない一生
楽しい心には楽しい一生
You will certainly ruin your whole life
over something so trivial in your mind.
Make your whole life happy over something
so pleasing to you in your mind.

わっはっはっはは うはははは
笑いは地球の治療薬
Give a big and hearty laugh.
The laughter is a cure for the heartache
that earthlings feel.

心配しない 慌てない イライラしない
Don’t worry.
Never lose your cool.
Don’t get irritated.

あるがままは生死もこえる
思い悩まずあるがまま
To accept yourself as you are is to rise above life or death.
Don’t worry about this or that. Accept reality as it is.

一人で生まれ 一人死ぬ
何も持たずに生まれ 何も持たずに死んでいく
You were born all by yourself.
You will probably pass away all by yourself.
You were born without bringing anything.
You will probably pass away without taking anything with you.

こだわらない こだわらない
うたがわないし 欲張らない
Don’t stick to anything.
Don’t get hung up on anything.
Don’t be suspicious.
Don’t act big.

疑いの心をおいだすと恐怖も消える
欲張りの心をおいだすと不安が消える
みんな仏様の種をハートの中に持って生まれた。
おおらかに おおらかに 花を咲かせよう
Driving away suspicion will neutralize fear.
Driving away greed will neutralize anxiety.
You were all born with Buddha’s species in your heart.
This is why you should be cool and collected
to have your own flowers coming out.

今を変えると 過去が変わり 未来が変わる
Change what you are into what you should be,
and you will get your past to be varied from now
and your future to be different from now.

般若心経を唱える声は
全ての生きもの全てのものに恵みを与え
美しいマンダラ世界に充ちる音楽 真実の言葉
苦しみを除き 楽を与え 命をつなぐ 秘密の智慧
Reciting the Wisdom Sutras
will give a blessing to everything, living or non-living.
This is a pleasant tune, a genuine expression,
filling a beautiful world of the mandala.
This is a secret of wisdom, eliminating agony,
giving enjoyment, and linking all the living together.

かろやかに かろやかに 飛翔する
みんなが大宇宙と一体になる 祝福の歌
This is an exquisite melody of blessing,
with everyone soaring up, airily and gracefully,
with everyone to be united into the macrocosm.

------拙い英訳:坂井孝彦
   (English translation: Takahiko Sakai)


● あとがき Postscript

1. 「科学で読み解く般若心経の世界」

柳沢桂子先生が東京新聞(2005.9.9)に登場されて,つぎのような主旨のことを述べておられました:

『電動車いすで散歩していたら、ご婦人から「大変でいらっしゃいますね」と声を掛けられた。
その時、「あわれみを受けている」と嫌な気持ちになったけれど、
すぐに「嫌な気持ちは私があの場にいたから出てきたのであって、
私がいなければこの気持ちは存在しない」と頭が切り替わった。

自我を捨てるとはこういうことか、と烏肌が立つような感覚を味わいました。

「私」という個別のものは存在しない。
「私」がいると思うのは幻覚だと。
後になって思えば、これは般若心経の「空」の状態です。

自我さえなければ、苦しみも悲しみも存在しない。
それ以降、私は自分が不幸であるとか、人を恨む気持ちがなくなりました。

厳しい修行をしなくても、普通の人でも、心の持ちようで、そんな状態になれる。
苦しみは、そこに至る手助けをしてくれる。
苦しむことを恐れてはいけません。』

2.「村上春樹」を翻訳する
JAY RUBIN 教授の英文エッセイの一節のご紹介:

・村上文学がもつ磁力の正体:
In Murakami, there is no relation, no
sacrifice for the nation, no phony idealism,
just a deep sense that life is endlesly interesting.

※ Life is endlessly interesting. という a deep sense
が村上文学にやどっている、とルービン先生は
言われます。村上文学には
phony idealismは皆無であるとも。

理想を追いかけていると長くもない現実の
日々を失うのでしょうね。人生はまたたくの間に
食い尽くされていくようです。

・世界的現象の一端を担える喜び:
This is an extremely positive attitude. Murakami's determination
to keep learning about the world and to remain open to the
ultimate mysteriousness of everyday life prevent from falling
into nihilism or pessimism.

※ Keep learning about the world. とRemain open to the
ultimate mysteriousness of everyday life. の二つがあれば、
nihilismとかpessimismに陥落してゆくこともなく生きてゆけそうですね。

おかげさまの日々の暮らしのなかの不思議なめぐりあわせに
こころしてゆけば、ニヒリズムに陥ることもなく
悲観に暮れることもなくなるのかもしれませんね。

If there is any "ism" here, it is extentialism - a stark, honest
conviction that life is what we make it.

※なるほど、Life is what we make it. なんですね。

A Murakami novel may force us to experience the dark side of life,
but the end result is not depressing. You come away from the book
feeling the journey was worth it. When readers say (as they often
do) that a Murakami novel has transformed them, they don't mean
it has made them want to go out and kill themselves, but
that they have learned to see the world in a new way.

※ 村上文学の読者は、See the world in a new way.
という変節をとげられそうですね。Look, a new day has begun!
ですね―T.S.Eliot(ノーベル文学賞受賞者)原作の
「ミュージカル:キャッツ」の主題歌「メモリー」に通じそうですね。

That is the most you can ask of any form of literature.
Being a tool in the service of such a world phenomenon
is probably not a bad thing.

(出所:Jay Rubin. The Translator as a Tool:
『通訳・翻訳キャリアガイド』. ジャパンタイムズ.
2006年8月5日[発行]. p.20-p.21)

※ Jay Rubin教授は現在ハーバード大学で
教鞭をとられておられているようです。1970年、国木田独歩
に関する論文で日本文学博士号を取得されて
います。夏目漱石、芥川龍之介の17作品を翻訳。
その後、
村上春樹の作品を多数翻訳されてこられています。

村上春樹の作品は30以上の言語で翻訳されている
そうです。
村上春樹は今年、
日本人として初めてフランツ・カフカ賞に選ばれました。
世界的評価を決定付けた村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』
も、Jay Rubin教授の翻訳になるものです。

マーク・ピーターセン先生(明治大学教授)は、
もし村上春樹がノーベル文学賞を今後得るようなことが
あれば、これは日本語→英語への文学翻訳の
分野でその右にでるものはないほどの力量をもたれる
Jay Rubin教授による第一級の翻訳に負うことになる、
と述べておられます。


● 写真:シャクナゲ 伊豆湯ヶ島 昭和の森
山崎正昭さん(調布市)からのプレゼントです。



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