湘 南 通 信
常楽我浄 日本のこころを世界の人々へ
SHONAN NEWSLETTER
A Japanese heart and mind to the world over

トップページ
バックナンバー
エキストラ
メール
@Christy

NO.423
平成20年1月 6日
January 6,2008

● 大木

(真民先生):

 ○ 大木を仰げ


耐えがたいときは
大木を仰げ
あの忍従の歳月と
孤独とを思え



Look Up to a Towering Tree

When you can no longer bear ill treatment,
look up to a towering tree
and give thought to the thousands of years
the tree has been enduring in solitude.



(金子みすゞ):

 ○ 木

小鳥は
小えだのてっぺんに、
子どもは
木かげのぶらんこに、
小ちゃな葉っぱは
芽のなかに。

あの木は、
あの木は、
うれしかろ。


The Tree Over There


Birds are perching
 on some twigs at the top of the tree,
Children are sitting
 on the swings in the shade under the tree.
Tiny leaflets are putting forth buds
 on all the sprouts of the tree.

The tree,
 standing over there,
 delightedly.

(*) フォード先生から "perfect!" とのコメントをいただいた。



(相田みつを):

 ○ 冬心

樹木は風雪の
中に他人に見せた
くない自分の
あるがままの
裸をさらす
ひとことも
弁解しないで


A Sentiment on Trees in Winter:

 Trees show themselves as they are,
    without any justification for their nudity
    that they hate others to see,
    in the face of the wind and snow.


                  (英訳:坂井孝彦)
                  (英文校閲:Frances Ford)


● 横浜時事英語クラブ月例研究発表会から

              2006年1月28日
                              かながわ労働プラザ(石川町、横浜市)

継続と集中によるよりよい外国語学習法をめざして(その1)
  
                坂井 孝彦
                (横浜時事英語クラブ)


2004年9月18日−19日に早稲田大学で開かれた日本実用学会第29
回年次大会の冒頭、神保尚武先生から、先生の『英語習得の諸問題』
と題するご講演の中で、〈(竹内理『より良い外国語学習法を求めて』
(松柏社、東京、2003・11)〉をご紹介いただきました。そのpp. 197-209
には、外国語学習を成功に導く31の方略がまとめとして記載されて
います。

神保先生はこの31の各方略をコメントされながらご紹介されました。
そしてこの方略に賛同の意を表されました。

以下にその方略を記してみます:
各項目の後に記されている〈英語〉は、神保先生による追加の説明
です。[   ]内の追記は、竹内理先生のご著書からその一部の内容を
抜粋させていただきました。

(不肖坂井)の考察も蛇足でございますが
追記させていただきました。


・日本人成人外国語学習成功者の研究
(15年間にわたるご研究の成果):

1) 大学生の学習記録
2) 達人たちとのインタビュー
3) 成功者の著わした書籍

(坂井):
ここで言う「達人」とは、日本生れで、12歳以降に本格的な英語学
習を開始していて、主として日本で英語を学び、留学経験があると
しても時期的に遅く、しかも豊富でない人で、家庭環境として英語
の使用が日常的ではなくて、現在は英語を使う仕事をしている「英
語の達人」、を指しています。

またここで言う「成功者」とは、こんな人々が対象になっています:
著者の信念ではなくて経験がベースになっていること、記述が具体
的であること、著者の外国語能力が確認できること、著者が11−12
歳以降に日本または対象言語が外国語となる地域で本格的に学習を
はじめたこと、著者の留学体験が学習の初期・中期の段階にはほと
んどないこと、例外的高度外国語学習能力者でないこと、著者の家
庭環境がバイリンガルではないこと。

竹内理先生は97冊を収集され、この基準に適合する69冊に絞り込
まれて研究されたようです。

(坂井):
「成功」とはどこにあるのでしょうか。
「成功」とは、はるかかなたにあると同時にいまここにもあるよう
です。成功は、「捨てない・止めない」ということにあるようです。
持続する今がなければ成功する未来はない、ようです。でも持続し
ていっても成功しない、ということもありうるし、そういう人もい
るかもしれません。でもまあ成功に近づきたいということであれば、
「持続は力なり」を少なくとも信じて実行するしかないのかもしれ
ません。もっとも、成功したくなければ継続的な努力などすぐにで
も放棄して怠惰にしていればいいのであって、しかもそのことは悪
いことだ、ということでもないようです。


○ メタ認識方略 (学習の段取り、つまり使用機会や時間の調整、目標
の設定や進度の確認などに関係する方略)
(坂井):「メタ」とは、学問・研究分野で使う言葉で、ある学問の
概念、理論に関する、という意味があるようです。

[外国語の「使用機会・使用条件」に関して]
1. (受信面:どの段階でも) 対象言語と接触する機会をできるだけ増や
す。
(坂井):受信とは「読む、聴く」こと。

2. (発信面:どの段階でも) 対象言語を使用する機会をできるだけ増や
す。
(坂井):発信とは「書く、話す」こと。

3. 一段と高いレベルで対象言語を使う必要がある場面・タスクに自らを
追い込む (中期頃から)。
[ある程度慣れてきたら、今度は自分の能力ではやや困難かと思われる
ような場面・タスクに、アウトプットの側面を中心にして挑戦してゆく。この
ような学習者が、外国語学習に成功する可能性が高い、ということにな
る]
(坂井):
*できるだけ大量の外国語の受信(インプット)をする。
*蓄積したものを発信(アウトプット)に回す。
*受信したものを発信の産物と捉えなおす。
こういう訓練によって発信力がつくようです。

*中期ごろからはやや困難とおもわれる場面・タスクでのインプッ
ト・アウトプットに移行してゆく:挨拶英語から会議英語へ、伝達
英語から説得英語へ、という手順になるようです。

*発信内容の例:
―日本や日本文化について。
―日本以外のこと、例えば日本人として西洋建築を語ること。

4. (教室場面や自習場面での) 練習活動と併行して、現実場面での言語
使用を積極的に増やす (初期後半から)
(坂井):練習活動の例:構文集や表現集のなかの例文を音声で聞き、
繰り返し発話するような活動。

[時間の調整について]
5. 対象言語を定期的に学習する (どの段階においても)。
[いわゆる達人域に至った学習成功者でさえも、「いまでも定期的に学習
していますよ」という報告をしている]
(坂井):「どの段階においても」とは、学習活動の初期から後期ま
で一貫して、ということを意味しているようです。

6. 対象言語を集中的に学習する (中期)。
[ある程度の基礎力がついたら寝ても覚めても学習する、外国語の学習
にどっぷりと身を浸す機会をもつ学習者が格段の上達を示すものと考え
ることができる]
(坂井):
*「中期」とは、学習段階の中期頃、の意。
*「寝ても覚めても」とは、例えば英語強化月間をもうけて、その
月は飲み会やデートを控えて勉強にとりくむ、というようなことを
意味しているようです。この場合、「聞く」「話す」に限定されずに、
「読む」「書く」をも含めた「浸し」であってもかまわないようです。
また、対象言語が使用されている地域へ行く必要は必ずしもない、
ようです。
*毎日コツコツ20分よりも1週間分まとめて2時間半を、あるい
は、1ヵ月分まとめて10時間のほうが効果的ともいわれます。一般
的には毎回すこしずつやるものと一年に一回ぐらい集中するものを
組み合わせる、のがよいようです。

7. (職業的成功ばかりを考えるのではなく) 学習そのものやコミュニケー
ション活動自体を楽しむ。
[学習を引っぱった要因:外国語が相手に通じる喜び―学ぶことが楽しい]
(坂井):相手の言うことが理解できて自分の言うことが相手に通じ
る、という目標に近づいている、ということを実感できる楽しさを
味わう―これはとてもよい刺激になるようです。

8. 短期の技術的な目標を持って学習を進める。
[ある音の発音練習、ある題材の円滑なシャドーイング]
(坂井)シャドーイングにはリピーティングも含みます。いきなり
のシャドーイングは難しいので。

9. 学習方法や学習過程の特性を理解する
 [進歩は急速にやってこないという意識化。成果が早急に現れないこと
を認識する。蓄積(コツコツ溜めておいたもの)と爆発の繰り返し。この学
習方法の意志化と学習過程の特性理解も成功のカギとなる]
(坂井):氷が水になるときの様相に似ているのかもしれません。あ
るいは山登りにも似ているのかもしれません。


● 日本の歌心の英訳比較:心情・情感の示し方・伝え方 (その1)
―Greg Irwin・中野一郎・Susan Osbornの各英訳歌詞から

                         坂井 孝彦
はじめに

日本の歌心を世界の人々に
その言外の情感も込めて伝えること―
こんなことができたらすばらしい。

たとえば、「夕焼け小焼けの赤とんぼ」の歌。
「日本童の会」が「私の好きな童謡」のアンケートによると、
一位は「赤とんぼ」(三木露風作詞、山田耕筰作曲)、
二位は「故郷(ふるさと)」、
三位は「赤い靴」
(出所:「筆洗」、東京新聞(朝刊)、2003年8月23日)。

この「筆洗」の編集子は
「生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉(夏目漱石)」
を引きながら
次のような言葉でこの一文を結んでいる:
「《夕焼け小焼けの赤とんぼ》は
やはり日本人の心の原風景なのだろうか」と。

日本は経済や通商や技術などの分野では
世界のひとびとにその名を知られるようになってきている。
しかし、日本人の心の原風景―
日本人の心情・情感については、
これまで伝えられてきた内容は、
とくに量的には、
あまり満足すべきものではなかったようだ。

「夕焼け小焼け」にみられる
秋の季節感、
寂寥感、
しみじみとした心情、
すがすがしい清潔感―
元の日本語の歌詞に込められている
こうした日本人の心の
原風景、情感、心情、心意気などを
どのようにして英語の歌詞のなかに
うたい込めてゆけばよいのだろうか。

日本語の名詩・名句・名歌などの
10年の翻訳体験を通じて、
次のような問題点を意識するようになった:

(1)日本語で書かれた名詩・名歌・名句などには、
多くの場合、すぐに同化してしまう―
情感の上で同調してしまう―
「すてきだなあ」
「すばらしいなあ」
という世界に没入してしまう―
理屈抜きである。
その心象風景は、
アナログ的な連続した動画のようで、
また墨絵のようであって、
「古池に飛び込む蛙」は
一匹のようにも見えるし二匹以上にも見える
という幅広い解釈を赦す世界のようである。

(2)こういう日本語を英語に転換するとき、
その日本語から汲み取ることのできる
心情・情感・感慨と、
英文にはつきものである理屈とをないまぜにして、
人生への考察や感嘆を語ることを強いられる。
そのとき英語で描写される世界は、
多数のデジタル的な静止画から
選んだ一枚の静止画の世界であって、
輪郭のはっきりした切り絵の世界でもあり、
透明感のある心象風景でもある。

ここでは、
5曲の日本を代表する歌のそれぞれに
英訳詞三種類を併記して
その訳詞内容を比較検討してみた。
第一はGreg Irwin訳詞、
第二は中野一郎訳詞、
第三はSusan Osborn訳詞である。

Greg Irwinは
日本語にも精通されているアメリカ人で、
1998年に「英語で歌うDOYO」を
銀座のガスホールでの音楽会で披露された。
この場にはお母さんも
アメリカからおいでになっていた。
本格的歌手活動の出発の年で、
お開きの曲は「故郷(ふるさと)」。
ホールいっぱいの聴衆も
みんな声を合わせて
Greg Irwinとともに歌った。

この歌は、長野オリンピックの閉会式の歌でもあった
日本発の「ワールドソング」である。

Greg Irwinは、
2003年には
メジャーデビューアルバム「Blue Eyes (ビクター)」
を出された。
すでに100余の日本の童謡や叙情歌に
英訳歌詞をつけておられる翻訳家兼歌手である。

Greg Irwinの英訳歌詞は、
元の日本語歌詞の意味内容を大きくすくいとって
それを英語圏のひとびとにもわかりやすい
と思われる英語表現に転換したもので、
日本語の定型や構文を超えてゆくときの
発想方法において
注目すべき点が多々見られる。

情感と理屈とをないまぜにして
英文化する方法において、
あるいは、英語圏の人々に伝わる内容かどうかを
勘案して日本語歌詞の一部を捨てたり
英語圏の人々に分り易いような内容を補ったり
してゆく眼力―
何を捨て何を生かしどんなことを訳補するのか―
というような英文歌詞を構成する際の
英文の示し方において、
有益な示唆を多々見ることができる。

中野一郎は1985年に
「日本人の原風景とも言うべき唱歌101曲の詞
にその英訳詞を添えられた著書を出された。
韻をふみながらの、
単語に重点をおいた逐語転換訳が主体となっており、
メロディに合わせて歌うこともできる名訳揃いである、
と思う。
こういう歌詞が世界に広まってゆけばなあ、
そうすれば日本人の
やさしさ、きびしさ、うつくしさが
世界に伝わってゆくのになあ、
こういう本が絶版になってしまっているのは惜しいなあ、
と感じる。

中野一郎の
この「日本人の原風景とも言うべき名歌101曲の詞
にその英訳詞を添えられた著書
=Nakano, Ichiro. 101Favorite Songs Taught
in Japanese Schools. Essay and Translation by Ichiro
Nakano, Illustrated by Sachiko Higuchi. 1983.
Tokyo: The Japan Times. Ltd.」
のなかには、
「赤とんぼ」「故郷(ふるさと)」「赤い靴」も含まれている。

Susan Osbornは
1998年の長野冬季オリンピックのメダル授与式で
「故郷(ふるさと)」を、
パラリンピックの閉会式では
「上を向いて歩こう」を歌って、
全世界の人々に日本の心の歌を発信し、
感動の涙を運んだ方である。
英訳歌詞の内容は
歌の全体的雰囲気を総括的に
表現した美しい創造訳詞が主体となっている。


“haiku in English”においては、
「世界でもっとも短い詩型として
紹介される日本の俳句とその逐語訳」や、
「五・七・五の定型を意識しながら
やっとつくった俳句らしきもの」は、
俳句本来の感性喪失、矮小化のみに終わることが多いようだ。
俳句的感性はたぶん人間に普遍的なものだから、
これを表現するためには、
単語に重点をおいた逐語変換や
定型といわれる形式優先に
とらわれすぎない方がよいらしい。

日本の歌の英語への訳出においてもまた然りで、
人間に普遍な感性感覚を伝えるためには、
元の日本語の単語やその構造に
あまりとらわれないほうがよいのかもしれない。


● あとがき Postscript

行方昭夫先生の『実践 英文快読術』
が発売されました。岩波現代文庫の
最新刊です。発行日:2007.12.14.

表紙帯にある「ことば」:
英文を味わう快感!
―懇切丁寧な解説で併走します―

「コンテクストの重視」というお考えかたが
貫ぬかれておりましてこれが印象的です。

つぎのような逸話も紹介されています。
おもわず
ニッコリしてしまいました:

------------------------------------------------
(引用はじめ)
(p. 23)
正しい意味はコンテキストで決まりますね。
前後関係、文脈という語をあてています。
日本語の場合でも
コンテクストは大事です。
私が挙げる例をここでもご紹介しましょう。
笑い話です。

国語のテストで、
「□肉□食」の空所を適当な語で埋めなさい、
という設問があり、
食い意地の張った息子が
「焼肉定食」と答えたと嘆いた母親。
やはり国語のテストで、
「蛙の子は(     )」の空所補充の設問に娘が
「蛙の子はオタマジャクシ」と答えたと嘆いた父親の話。

(p. 75)
(英和辞典を)編纂している友人に
聞いた話では、
「この箇所のもっとも適切な訳語がでていない」
という抗議がよく来るそうです。
しかしあらゆる場合に
合致する訳語を載せるのは無理です。
基本的な意味がしっかり載っていれば、
後はコンテクストに合わせて読者、訳者
が自分の力で考え出すべきだと、
私は思います。


(pp. 26-30)
P: You divorced her.
D: No, she divorced me. Extreme cruelty.
   I hit her with a skillet.
P: You didn't.
D: A stainless-steel skillet.
   Still warm from propovers.
   Right across her behind.
   Raised a welt that lasted for weeks
   according to her lawyer.
   I was never privileged to see it.
P: I don't believe you.

(雑な読み方):
P:その人を離婚したんでしょ?
D:いや違う。彼女が僕を離婚したのだ。
  とっても残酷だよ。
  ぼくはフライパンであいつをなぐってやった。
P:まさか、そんなことはしなかったでしょう?
D:ステンレスのフライパンだったよ。
  マフィンを焼いた後でまだ熱かった。
  あいつの背後から斜め右になぐった。
  あの女の弁護士によると、
  数週間続くみみずばれを起こさせたそうだ。
  ぼくはそれを見る特権を与えられなかった。
P:わたしはあなたを信じないわよ。

(正確にコンテクストを読んでみると):
P:その人を離婚したってわけね?
D:それが違うだな。あっちが僕を裁判所に訴えたのだ。
  ひどい暴力を振るったという理由でだ。
  実はフライパンでなぐったんだ。
P:まさか!
D:ステンレスのフライパンでやった。
  マフィンを焼いたまだ熱い奴だ。
  尻に全治数週間のみみずばれができた。
  もっともこれは弁護士の証言で。
  ぼくはそこを拝ませてもらえなかったがね。
P:嘘ばっかり!
(引用終わり)
----------------------------------------------


I don't believe you.
を「嘘ばっかり!」と訳されています。

先生と立ち話をさせていただいたときに
こうしたすばらしい訳文を
どうやって思いつかれるのですか、
とお尋ねしましたところ、
「きちんと英文を読む喜び、英文を味わう快感」
についてお話くだされ、これを楽しんで
つづけてゆくと
「自然にこういう訳をつくることができますよ」
というご主旨の説明をしてくださいました。



● あとがきの2

『坂村真民全詩集』の第八巻
(全340頁)が、
平成19年12月10日、
大東出版社から発刊されました。

先生が97歳で永眠されたのが
平成18年12月11日でした。
もう一年あまりの月日がたちました。
先生が90代に入られてからに作品も多数
おさめられているようにおもいます。

ご息女さま真美子様はつぎのように言われます:
「父の願いは、坂村真民全詩集の完結でした。
一周忌にあたる12月11日に刷り上ったばかりの
「第8巻」が届き、父の遺影の前にお供えすることが
できましたことは、託された者として大きな喜びです。
------」


第8巻の212頁から:

九十代

九十代を
どう生きるのか
それは今のわたしの
最大の課題
長短針がかさなり
わたしを目覚めさせ
宇宙の働きのなかで
いろいろ考え
ペンをとっていると
九十代というものが
特別深い意義を
持ってくる



● あとがきの3

書評 (『英語教育』 2007.12. p. 93):

『英語表現構造の基礎』
冠詞と名詞・動詞と文表現・文型と文構造

織田 稔 著

A5判295pp.
本体3,000円
風間書房

 英文法を教えるためのヒント

英語を学び始める中学生ともなれば,
知的好奇心に溢れ,
オーラル・アプローチによる
文法導入では物足りず,
「なぜ?」と問わずにいられない生徒が
いても不思議ではない。

教室で明示的に教える,教えないにかかわらず,
教師には十分な英文法の知識が
求められる所以である。

本書は,
『英文法学習の基礎』(1990,研究社)の冒頭で、
唱えられた「表現構造としての文法」を
一貫して追求してきた著者の
近年の論考を纏めたものである。

全体は,
T「英語冠詞の用法とその学習」,
U「動詞の意味と形態の発達」,
V「話し手の判断と気持ちの表現」,
W「文法的文の構造と基本文型」
の4部から成る。

I like living in the city. や
People dance in the street until late at night. の
定冠詞の使い方を生徒に質問されたら
どう答えたらよいだろうか。
T部では著者の一連の体系的冠詞研究を背景に,
現行の中学教科書の例文を基に,
冠詞の学習指導の骨格が
実践的に示される。
 
IV部では「英語の文の仕組みということでは,
やはり基本5文型が出発点であり
,ゴールである。
現代の目覚しい英語学,言語学の発展の陰で,
すっかり置き去りにされてしまっているようだが,
英語の学習現場では,
まだこれに代わるものが出ていない。
自信を持って英語の文の学習指導をしていただけるように,
基本5文型の考え方の検証と再活性化は,
私の年来の願いであった」(p.276)
との認識のもと,
5文型の意義が検討される。

複数語動詞 (bring up, go through, put up with 等)
の分類(P.213)や
SVOCの整理(p.248)など
明快で有益である。

U部・V部においても,
多くの中学生が躓く
一般動詞の疑問文・否定文に出現する
do を, Did you go there?
「あなたはしなかった,そこへ行きは」(p.78)
と導入する提案をしたり,
仮定法過去完了を
「愚痴や後悔の表現と理解すれば,
ことは簡単なのに,などと言うから
ややこしくなる」(pp. 155-6)と
喝破したり、
Should you have any questions…の類の
仮定法を
「ifの省略というより疑問文の感覚であり、
これも丁寧表現の一手法であった。
かねて思っていたことだが、
『ifの省略』という考え方は
もうそろそろ止( )めにしたらよいのではないか」(p. 165)
とするなど,
実用的提言が随所に見られる。

最近,
英語学の研究成果を学校英文法へ
活かす旨の企画を学会や雑誌で時折見かけるが,
自分の研究対象である統語構文を
どう提示するかに終始し,
それが中学・高校の英文法教育の
ニーズにどれだけ応えるものなのか
心許ないものも少なくない。

現場を熟知する著者による本書は
そうしたものとは明確に一線を画している。
  (北海道大学准教授 野村益寛)



お正月休みなどに、

『英語表現構造の基礎』
 冠詞と名詞・動詞と文表現・文型と文構造

織田 稔 著

をご覧になっていただけますようにと
ご紹介させていただきました。
●写真:修養団伊勢道場 澤 好成 様からです。

 伊勢神宮内宮の池です。

 うつくしい光景―水鳥にやすらぎをおぼえます。


トップページ
バックナンバー
エキストラ
メール
@Christy