NO.001

平成14年12月18日
Decenber 18,2002

● 般若心経

『般若心経に魅せられて』という長文のエッセイを渋谷義さんからご贈呈いただきました。

(渋谷さんは大商社での永いお勤めを「卒業」されて、いまは、執筆活動や語学グループ活動など多彩な活躍をくりひろげられています。)

エッセイの一部をご紹介させていただきます:

もう十数年前になろうか?ある時、坊さんに「お経を覚えられたら、お盆など忙しい時に坊さんのアルバイトをしてみたいが、
使ってくれますか?」と半ば冗談に言ってみたら、

「いいですよ。頑張ってしっかり覚えて下さい」と言われた。

毎日が日曜日になってから三年弱経った。そんなこと忘れていたが、「般若心経」には関心を抱いていた。お経でも覚えられたら、坊主のアルバイトもさることながら、「我が煩悩」を追い払うことができようか?!

(もっとも無理に追い払うこともないか?坊主だって煩悩からなかなか抜けられない?)

最近、「声を出して覚える般若心経(大栗道榮著)」を見つけて購入してみた。懇切丁寧な解説でわかり易く、CDもついているので聴きながら覚えようとしている。

尼さんとの斉唱はリズミカルでウットリ聴き惚れる。

なかなか覚えられないが、「般若心経」の説明を読むと、味わい深くこれからの人生の心の糧になるかと思えた。

著者も般若心経は、お経というよりも、幸せな生活のための指導書で、心が豊かになる,呪文ですよ、と言っている。

有名な弘法大師も「般若心経という真言は、とても不思議な力を持っている。…朝夕に親しめば、煩悩も除くことができ、
超然とした心境を持てる」とおっしゃっている。

意味をよく味わいながら覚えよう!ご利益が有りそう!?

・仏説摩詞(ぶっせつまーかー 仏様が説かれた偉大なこと)

・般若(知恵)波羅蜜多(はんにゃはらみーた 悟りの境地に達すること)

・心径(しんぎょう お経)

・観自在菩薩(かんじーざいぼーさー 観音様、修行時代の釈尊)

・行深般若蜜多時(ぎょうじんはんにゃーはーらー・みーたーじ 仏さまの知恵で波羅蜜多を深く考え、それを行う時。菩薩の六つの波羅蜜多行とは、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、知恵のこと)

・照見五蘊皆空(しょうけんごーうんかいくう 人も物も形あるものは、やがて亡びてなくなることを見極めること。人間は色という体と、受、想、行、識という心が融け合ったもの、これを五蘊という)

・度一切苦厄(どいっさいくーやく すべての苦しみや災難のある此岸から離れて安楽の彼岸は渡ること)

・舎利子(しゃーりーしー 釈尊の十大弟子の一人で、ナンバーワンの知恵者)

・色不異空(しきふーいーくう この世の中のどんな物でも、時がくれば消滅してしまう。ヘラクレイトスも「万物は流転する」と言った。諸行無常と虚無的になることもない、生物学的には新陣代謝ということだ)

・空不異色(くうふーいーしき この世の中の物質は、みんな因縁により原子が集まって分子となり、分子が集まって作られたものだ。私には些か科学的過ぎる説明に思われて有り難みが薄い? 空即是色の空は英語のナッシングではなく、真空妙有といって、妙なるすばらしいものがあるということ。これで何とか了解!)

(しきそくぜーくうくうそくぜーしき 色不異空不異色のダメ押しであって、色も空も根本は同じものだということ。「かなわぬ時の神頼み」はダメで、「人間は、自分でも分からぬ能力を持っている。空即是色で頑張るぞ」と、フアイトを燃やせば、幸運の女神も協力してくれる!

    (中略)

以上、大栗道榮(おおぐりどうえい、高野山真言宗伝燈大阿闇梨)高僧の196頁に及ぶ懇切丁寧な本を、私見(感嘆・嘆き・ぼやきなど)を少々交えて、まとめてみた.今後の精神生活、生き方に多少は役に立つかと思う。(引用終わり)

D.S.ノーブルという方による「般若心経」の英訳文も渋谷さんからいただきました。
渋谷さんも上記のように少し問題にされている一番有名な「色不異空 空不異色」の部分は次のように訳されています。

・色不異空 Form is not other than emptiness.
・空不異色 Emptiness is not other than form.

この部分にはいろいろな説明がされてきております。私は寺田一清先生によるつぎの説明が気にいっています:

・色不異空(しき-ふ-い-くう)
すべての現象は宇宙生命の現われに他なりません。

・空不異色(くう-ふ-い-しき)
宇宙生命はもろもろの現象となって具現されております。
              (現代語訳:寺田一清先生)

これをもとにしまして、いま少し、原文の意味内容がとりやすい英訳を試みてみますと次のようになります:

All of the beings in the universe
are none other than
bodily forms created by Heaven.

All of the bodily forms created by Heaven
are none other than
all of the beings in the universe. (英訳:坂井孝彦)

・色不異空(しき-ふ-い-くう)」
→「色」はすなわち「空」である。
→「すべての現象や存在は宇宙生命の現われに他ならない」
→ ・「道(Tao)」(老子)
→ ・「帝則」(良寛)
→ ・"God's work"(神の御業) (ケネディ)
→ ・「宇宙生命、宇宙意志、大愛」(寺田一清先生)
→ ・「おかげさん」(相田みつを)
→「宇宙の森羅万象の存在は天が創造したものである」

→ All of the beings in the universe
are none other than bodily forms
(including appearances, conditions, procedures)
that Heaven has created.

数学の世界では、分母に零をおく場合はこれを「[不能]という世界」に入れて考察の対象から除外します。例えば、(x+5)/(x-2) という代数式においては、x=2の場合には、この式は成立しないということになっています。
「7割る0」の場合には、どのような世界が開かれるのか、などということは、数学の授業では考えてはいけないことになっていました。x=2の場合には答の欄には「不能」という文字を記入しなければなりませんでした。

[色] を分子におき、
[ゼロ=零≒ナッシング]を分母におくという世界、これが実は、[空]である、というのが私の感じです。

荒 了寛さんは、
「空」と「無」についてつぎのような説明をされています: 
 
 「苦しみをなくすのが 無」
To try to be at the place
where no suffering prevails is nothingness, "Mu".

 「苦しみにこだわらないのが 空」
Not to be particular about any suffering
is emptiness, "Ku".
(参考文献:荒 了寛『生きるとはなあ』里文出版. 1998.)




● 写真(22.4KB):
By courtesy of 山崎正昭さん。
    カナダ1000kmの旅から(2002.10):Mt. Rundle, Banff National Park.