NO.016-2

平成15年 4月25日
April 25,2003

● 坂村真民先生の毎暁誦( 一言芳談抄から)をどうぞご覧ください:

真民先生曰く:
私が毎暁唱えている言葉です。

--- どうか、暗誦して実践して下さい。
私の敬仰する唐木順三先生も、
大変よい言葉として推奨しておられます。

--- 千古不易の名文です。
どうか唱えて、自分を引き締めて下さい。

「よひにはふしてなげくべし、
 いたづらにくれぬることを。
 暁にはさめて思ふべし、
 ひめもすに行ぜん事を。

 懈怠(けたい)の時には
 生死無常(しょうじむじょう)を思へ。
 悪念思惟(しゆい)の時には
 声をあげて念仏すべし。

 鬼神魔縁(きじんまえん)におきては、
 慈悲(じひ)をおこして利益(りやく)をあたへ、
 降伏(ごうぶく)の思いをなすことなかれ。

 貧(ひん)は菩提(ぼだい)のたね、
 日々(ひび)に仏道にすすむ。
 富(とみ)は輪廻(りんね)のきずな、
 夜夜(やや)に悪業(あくごう)をます。」

  (出所:
  ・坂村真民.『詩国、第42巻2月号、通算488号』2002年2月1日発行.)
  ・森下二郎校訂. 『一言芳談抄(岩波文庫2667, 整理番号195)』. 東京:岩波書店. 1941. pp89-90.)

● Dennis Hirota さんによる英訳:

At night, lie down and lament
this meaningless procession of hours,
and at dawn awaken and resolve to endeavor
in your practice to the day's end.

When slovenly and negligent,
set your mind on the transience of samsaric existence.
When wayward thoughts take hold in your heart,
raise your voice and utter the nembutsu.

When confronted by demons and imps,
arouse your compassion and try to help them;
do not feel you must overcome them.

Poverty is the seed of awakening
that day by day advances us along the Buddha-path.
Possessions are the chains of birth-and-death,
and night after night they move us to further evil.   
                ANONYMOUS(=称人不詳)

(Source:Hirota, Dennis. 1989."Plain Words on the Pure Land Way
    ―Sayings of Wandering Monks of Medieval Japan" Kyoto: Ryukoku University. p37.)

● 大橋俊雄さんによる現代語訳:

「日が暮れたら、床に入り、
何もしないで今日一日むなしく過ごしてしまった
 ことをなげきなさい。
朝 目が覚めたら、
終日念仏につとめようと思いなさい。

なまけ怠る心がでてきたときには、
生死無常を思い、
悪い思いやよこしまな考えがおきたときには、
声をあげて念仏するようにしなさい。

悪い鬼神や人びとをまどわしさまたげるもの
 がでてきたときには、
あわれみ慈しみの心をもって接し、
 恵みを与えるようにつとめ、
けっして力をもって相手をおさえ鎮めたい
 といった考えをもってはいけません。

貧しさはさとりを得る縁となり、
それがやがて日々念仏をつとめるもとになります。
財をもっていますと輪廻を断ちきることができず、
つねに悪いおこないをおこすようになるものです。」

  (出所:大橋俊雄・吉本隆明. 1996.
『死のエピグラム「一言芳談」を読む』. 東京:春秋社. p133.)

● 原文と英訳文と現代語訳文との併記

(1)「よひにはふしてなげくべし、
いたづらにくれぬることを。」

At night, lie down and lament
this meaningless procession of hours, 

「日が暮れたら、床に入り、
何もしないで今日一日むなしく過ごしてしまったことをなげきなさい。」

(2)「暁にはさめて思ふべし、
ひめもすに行ぜん事を。」
and at dawn awaken and resolve to endeavor
in your practice to the day's end.

「朝目が覚めたら、
終日念仏につとめようと思いなさい。」

(3)「懈怠(けたい)の時には
生死無常(しょうじむじょう)を思へ。」

When slovenly and negligent,
set your mind on the transience of samsaric existence. 

「なまけ怠る心がでてきたときには、
生死無常を思い、」

(4)「悪念思惟(しゆい)の時には
声をあげて念仏すべし。」

When wayward thoughts take hold in your heart,
raise your voice and utter the nembutsu.

「悪い思いやよこしまな考えがおきたときには、
声をあげて念仏するようにしなさい。」

(5)「鬼神魔縁(きじんまえん)におきては、
慈悲(じひ)をおこして利益(りやく)をあたへ、
降伏(ごうぶく)の思いをなすことなかれ。」
When confronted by demons and imps,
arouse your compassion and try to help them;
do not feel you must overcome them.

「悪い鬼神や人びとをまどわしさまたげるものがでてきたときには、
あわれみ慈しみの心をもって接し、恵みを与えるようにつとめ、
けっして力をもって相手をおさえ鎮めたいといった考えをもってはいけませ
ん。」

(6)「貧(ひん)は菩提(ぼだい)のたね、
日々(ひび)に仏道にすすむ。」

Poverty is the seed of awakening that day by day advances us along the
Buddha-path.

「貧しさはさとりを得る縁となり、
それがやがて日々念仏をつとめるもとになります。」

(7)「富(とみ)は輪廻(りんね)のきずな、
夜夜(やや)に悪業(あくごう)をます。」

Possessions are the chains of birth-and-death,
and night after night they move us to further evil.

「財をもっていますと輪廻を断ちきることができず、
つねに悪いおこないをおこすようになるものです。」

● 龍谷大学仏典翻訳センター出版目録から:

 『一言芳談』(Plain Words on the Pure Land Way)
デニス広田訳、A5判、138頁、1989年刊。
(これは)
鎌倉時代を生きた念仏ひじり達の語録である。
ここに示された言葉は直截にして明晰、
これを読むものには、
すべての衆生の救済の道として、
この波乱の時代にひろがりはじめた念仏の教えに
自らをささげた人物たちの生と思想が、
手にとるように生き生きと感じられる。

この語録は
様々な宗派・学派の分派する以前の
発生期の日本浄土教を探る重要な資料であるばかりではなく、
草庵文学の重要な一例でもあり、
また仮名法語としても研究に値するものである。

● あとがき:

瀬戸内寂聴さんのお好きな「一言芳談42段の中の次の一節」もいいですね。

あひかまへて、
今生は一夜のやどり、
夢幻の世、
とてもかくてもありなむと、
真実に思ふべきなり。

Earnestly resolve in your heart:
this life is one night's lodging,
this world but dream and illusion,
so let it be as it may.

 
生涯をかろくして
後世をおもふ故、
実にはいきてあらんこと、
今日ばかり、
たゞいまばかりと真実に思ふべきなり。

As a means to taking your existence lightly
and aspiring for the world beyond,
you should become keenly aware
that being alive is a matter of this day only,
of the present moment alone. 

かくおもへば、
忍がたきこともやすく忍ばれて、
後世のつとめもいさましき也。

Realize this,
and what is now scarcely endurable
will be easily borne;
your endeavor for the world beyond
will be dauntless.

かりそめにも
一期を久からむずる様にだに存じつれば、
今生の事おもくおぼえて、
一切の無道心のこと出来る也。

If you imagine even casually
that your life will be long,
things of this world
will swell in importance
and all those concerns
unrelated to the aspiration for enlightenment
will arise. 
            (英訳:Dennis Hirota)

きびきびとしたすてきな英文!いいですね。




●写真の説明: ほほ笑む春  (in my garden)